日本から感謝された旅

「日本に何か恩返しがしたかったんです」トーマス=コーラ氏は胸に迫る思いの中、スイス大使館にて招待客、報道陣の前でのスピーチの中でこう語った。「私の感謝の気持を表したかった。」そして、彼の気持に今回、日本政府が答えた形となる。

2011年3月11日はコーラ氏にとっても人生ががらりと変わる出来事となった。津波、そしてその後の原発での事故により、旅行会社で日本旅行担当をしていたコーラ氏は、ほぼ全ての客を失う事となる。「あの時はただ次々入るキャンセルを処理するばかりでした。もうこの仕事は続けられないだろうなあ、とは思いましたよ。」と、コーラ氏は当時を振り返ってこうつぶやく。

それから彼はその後日本を旅して周る事を決心する。“日本は大きい、危険なばかりではないのだ”と自らの身をもって人々にアピールする為に。彼が歩き通したのは丁度5ヶ月間、総長2900kmの道のりであった。彼の行動は瞬く間にメディアにも取り上げられ、行く道で出会う人々は彼の意気込みにただ驚き、感動した。それは日本政府も例外でなく、ついには彼に表彰する次第とまでなった。

スイス大使館にて贈呈式が執り行われ、トーマス=コーラ氏には彼の功績を讃え、観光庁長官溝端宏氏より感謝状が贈られ、集まった報道陣からはその瞬間をフィルムに収めようと無数のフラッシュがたかれた。

溝端氏はまた個人的な贈り物として、福島県産の起き上がり小法師を贈り、「これはレディガガさんにもジャスティンビーバーさんにも記念品として贈ったのと同じもので、我々からの感謝の気持ちとして、コーラさんにも是非受け取っていただきたい」と語った。

この福島県会津地方名産の起き上がり小法師の意味は“七転八起”だと、溝端氏は昨年夏にレディガガが被災地支援イベントの為に来日した際に彼女にも贈呈し、その存在は世界にも知られる事となった。

コーラ氏の日本縦断は素晴らしい思い出と共にその2900kmの道のりを終えたが、彼の旅はまだゴールに到達していないようだ。「この日本の為の旅はまだ続きますよ。今は特にドキュメンタリー映画の完成を楽しみにしています。」と彼は語った。

表彰式の後、招待客と報道陣はコーラ氏の旅のポートレイトとなる映画の予告編の初公開を目にした。 「Negative: Nothing – 全てはその一歩から」は今年中に本編が公開される予定。予告編の公開も近日中にされる。